2016年 09月 19日 ( 1 )

北アルプスに抱かれた日 【DAY1】 旅のはじまり


「北アルプスをフラフラしたい。」

かねてからの願望であった。

これまでは3連休以上がとれない仕事だったため、それは夢のまた夢。

そんな状態が気付けば6年。その間、3泊以上の登山は一度もなかった事になる。


そして、一旦フリーになった今年。

真っ先に計画を立てた山行は勿論・・・


・・・・


旅の目的地は北アルプス・雲ノ平。
それを取り巻くどの名峰よりも、私の一番の興味はその「日本最後の秘境」と呼ばれる別天地。
そこだけはどうしても自分の目で観てみたかった。

同じタイミングで仕事を辞めた同僚と、5泊以上で計画を立てる。
計画を立てると言っても、もちろんそこは私。超絶ざっくりである。


・・・・


数週間後。

そろそろ話を詰めようと、同僚に連絡を取るも

返答がなかった。


そうか。

私は、無理に問い続ける事はしなかった。


・・・・。


7月7日(水)

私はひとりで新穂高に来ていた。

5時50分。
隣に車を停めた登山者が、僕の車にゴン!と、ぶつかる音で目が覚めた。
車内で寝ていた僕の存在に気付いたその登山者は、軽く会釈をして引き続き準備に勤しんでいる。
深夜に着いた時は何も無かったその駐車場が、いつの間にか鉄の塊で埋まっていた。


・・・・


ルートをどうとるか、ずっと悩んでいた。

理想は新穂高から入山して、立山に下山する夢のルート。
しかし悩みの種は、新宿~新穂高間を直通するアルペン号がこの時期まだ走っていない事だった。
直通以外だと乗り換え条件が非常に面倒臭く、私の性格では不可なのである。
車で行って回収する方法も考えたが、お金も時間もかかる、尚且つひとり。
こんな面倒臭い事はないので、もちろんこれも却下となった。
そして結局、マイカーアクセスからの新穂高ベースで周回するルート計画に落ち着く事になった。

その計画の詳細はこうである。

【Day1】新穂高-双六小屋
【Day2】双六小屋-双六岳-三俣蓮華岳-鷲羽岳-祖父岳-雲ノ平
【Day3】雲ノ平-薬師沢-太郎平小屋(薬師峠)
【Day4】薬師峠-太郎山-黒部五郎岳-三俣山荘
【Day5】三俣山荘-(巻道)-双六小屋-笠ヶ岳山荘
【Day6】笠ヶ岳-(笠新道)-新穂高

5泊6日のテント泊。
あくまでも予定であり、計画を立てた時からこの通りに事が進むなんてちっとも思っていない私である。
というか、それが私。

かくして
7時20分に、私の山旅は始まった。


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今回、45リットルのザックが相棒である。



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【TERRA NOVA】 VOYAGER45

重さはなんとか14kg未満に抑えたのだが、かなり詰め込んだ状態。
背負った感じは完全にキャパオーバー気味で、早くも若干の後悔が滲んでいた。
(前置きしておくが、私はウルトラライトの人ではない。)
50リットルのグレゴリーザックもあるのに、なぜこのザックをチョイスしたのか。
実際のところそれは私にもよく分からない。
それでも食料はかなりギリギリの量で、「極力、山小屋の売店を頼ろう」作戦な私である。



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長い林道歩きを終えると、地味に傾斜のある登りに。
序盤はかなり良いペースで登っていたのだが、久しぶりの重い荷物が私の肩を襲う。
鏡平山荘前まであと少しのところで徐々にペースダウン。


12時5分

鏡平山荘。



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小屋開け前という事で、辺りはまだ静まり返っていた。

鏡平から眺める槍ヶ岳がキレイだと聞いていたのだが
残念ながらその全貌を拝む事は出来なかった。



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そこから弓折岳はそこそこの急登で、完全にバテる。
というか、一向に体が重さに慣れない。といった方が正しいか。



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それでも、双六小屋が見えてくると、湧き上がるテンションと共に体も軽くなった。
当然そこではセルフショットでそれなりの時間を費やす事になる。



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・・・・。


15時15分

双六小屋。



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休憩を除くと、ほぼほぼコースタイム通り。
とはいっても、ここまでの一ヶ月間は仕事で登山が続いていた事もあり
(いくらか脚力がアップしてるんじゃないか・・・)と、思っていたのだが
この結果を受けて自分はごく普通の脚力であった事に肩を落とした。


・・・・。


テント泊の受付で小屋へ入ると、受付嬢にある事を伝える。

数分後。

「ウッドさーん!」

と、聞いた事が無いのに聞き覚えのある
そんな不思議と親しみのある声が小屋の奥から響き、ひとりの女性がやってきた。
山インスタグラムで有名な当小屋の若女将・カナさん。
友人の友人。そんな繋がりでお互いの存在は知っていたので、話はスルスルと進んだ。
私がインスタ上でバカな写真を撮っている事も知っているので

「何か撮りますよ?」

と、言ってくれたのだが
あくまでも仕事中である彼女を巻き込むわけにはいかない、という自制心が働き
それは下界で会った時のために温めておく事となった。

彼女は夕ご飯担当のため15分ほどしかお話出来なかったが、とても実りある時間であった。



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ちなみに上の写真。
ふたりの首の角度がシンメトリーであることは
何の打合せもない偶然である。


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テント場に戻ると、風がいくらかある。
風が強いとは聞いていたので、最近使用頻度の多いワンポールテントは止めておいた。
BIG AGNESのフライクリークでこの旅を乗り切る事にする。

夜はポールが大きくし撓るほどの強風となった。



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深夜。

風は止んでいた。
天気予報ではこの後、一時的に天気は回復する予定。
最近は星空を見る事すら億劫に感じるほどの面倒臭がり度満点な私だが
テントが結露していなかったので(基準そこかよ)、室内から顔を出してみる。

空は満点の星空。

黒い空より輝く星の面積の方が多いのではないかと錯覚するほど、見事な星空だった。
(写真では伝わりません)



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後から小屋のカナさんに聞いて気が付いたのだが、この日は七夕。
そんな特別な日に、空を掛ける天の川をひとり堪能していたわけだ。


(これは、良い山旅になりそうだ。)


この時は当然、そう思っていた私である。


・・・・


つづく


by inouewood | 2016-09-19 22:57 | 山のこと