両神山とルーキー




「初心者の子をひとり山に連れて行く事になった。」

いつものキム兄から、突然の連絡だった。


どちらかというと、彼は”連れて行く”タイプの人間ではないので
僕に白羽の矢を立てたようだ。

丁度休みだったので、勿論僕はOKサインを出した。


すると

「両神山に登ってみたいんだ。」

それはキム兄の希望だった。




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・・・・

(新人さんをいきなり両神山か・・・。)

しばらく僕は考えていた。

10年以上前に登った記憶を少しずつ捻り出す。

危険なところもないし、初心者の子は20代半ばだという。

(まあ、なんとかなるか・・・)

そして
その行程を練るのも、勿論僕というわけである。


・・・・。


10月27日(火)

「30分遅れる。」

新人のS嬢を迎えに行っていたキム兄。安定の遅刻である。

・・・・。

今回は日向大谷からの入山。

駐車場に到着すると、既に3台ほど車は停まっていた。


「ベンツが停まってるよ。どういう登山者なんだろうね。」

なんて話をしながら、いつも通りのんびりとした準備タイムである。

少し余分に移動時間をとっていたこともあり、予定時間通りの到着だった。




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8時

スタート。


あ、行ってきます。




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序盤はひたすら樹林帯。




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さて、今回初同行のS嬢。

「初登山が両神山とか、なかなかいないんじゃないか。」

と、僕が唸るほど渋い山デビューを飾る。

レベル的に心配するところもあったが

どうやら10代の頃はバスケをやっていたという話を聞いて

「なら、大丈夫だな。」

と、キム兄とふたり根拠のない安心を得たのであった。




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それにしても、この両神山。

退屈の樹林歩きかと思ったがそうでもない。

この山が他と違うのは、とにかく広い谷を要するその独特のスケールである。

谷歩きなのに、常に開放感を得る事が出来るこの不思議な空間。

なんとも心地よい時間だ。

残念なのは、それが伝わる写真がなかなか撮れない事。

ここは立派な桂さまの写真でお許しください。




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10時

清滝小屋。




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シーズンはてっきり有人小屋に戻っているのかと思いきや
まだ無人小屋のままだった。

そこでしばらく汗を乾かす。


S嬢の状況を確認しながら

「キツかったら、俺たちは別にここまででもいいんだよ?」

そこはさすがの”もったいない登山”な僕とキム兄。

それは紛れもない本音である。


「行きましょーよ!」

ピンピンのS嬢は、当然のようにそう答えた。

やるな。


・・・・。


10時30分

再度出発。ここからが正念場である。

急登を登り終えると、次は鎖場が続く。




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が、やはり鎖のオンパレードの八丁尾根コースと比べると、コチラのそれは可愛いものである。



12時

両神神社。




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そこで、先を行っていたグループの女性がダウンしていた。

一人が付き添い、他のメンバーはそこに荷物をデポして山頂へ向かっているらしい。

足を摩り続ける女性。


S嬢は至って元気で

「ああなっちゃう人結構いるからね。なかなかやるじゃないか。」

と、滅多に人を褒めない僕の言葉に、S嬢は心なしか嬉しそうな顔を見せてくれた。




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岩尾根に出れば山頂はもうすぐそこ。




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13時

山頂。




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狭いその空間には登山者は二組。

一組は持参した大量の稲荷寿司をなぜか立ち食いしていた。

江戸っ子なのだろうか(どういう事だ)。


もう一組は僕らの到着を合図にしたのか、入れ替わるようにして去っていった。



どうだい、S嬢。

これが、山だ。




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簡単に昼食を済ますと
キム兄が珍しくコーヒーを用意してくれていたようだ。

おもてなしタイムが始まるかと思いきや
カップを忘れるという安定のうっかり具合を披露するのであった。




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しばらくボヤボヤしてから
僕とキム兄はS嬢に写真を撮ってもらう事にした。

我々の間で最近流行っている、直立。

そして2人とも




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白シャツ。


・・・・。


今日も平和な一日である。


・・・・。


そのまま、意味不明の撮影会スタート。




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実はこんな感じで100枚近く撮ってもらっているのだが(笑)
今回はこれだけにしておこう。


初登山のS嬢を、こんな愚行に巻き込んでしまった事に罪悪感も少し。

とはいえ、大満足のその時間を終えた。


・・・・。


14時30分

後は来た道をそのまま引き返すのみ。




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S嬢は途中「膝が痛い!」と言いながらも

たいして痛い素振りも見せず根性で下ってみせた。



16時30分

下山。



終わってみれば、実に楽しい一日だった。

というか、バカな写真が撮れただけでも満足な僕とキム兄なのである。


「最初からこのクラスの山登れるんだったら、ある程度の山は登れるよ。」

僕はS嬢に太鼓判を押した。

彼女が全くの楽勝で下山出来た事が当然嬉しいおじさん2人。


さて、彼女はこのまま登山を続けてくれるのだろうか。

我々はそれを押し付けず、遠くから見守るのだ。


いつの日か、バリバリの山女になっているかもしれない。

はたまた

どこかで楽しみ方を間違え、白シャツを着て我々の横に立っているかもしれない。


それを決めるのは

自由。


・・・・。


帰りの道中
僕とキム兄が野球のラジオ中継に熱くなっているその後部座席で

彼女は気持ちよさそうに眠っていた。




おわり
by inouewood | 2015-11-24 01:10 | 山のこと
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