赤岳鉱泉。安定のもったいない登山 【2】


その1はコチラ


・・・・。


僕の目の前に飛び込んできた者がラッシャー木村ではなく
キム兄だった事は言わずもがなだが

”木村違い”というなかなかのニアミスである。

とまあ、そんな事はどーでもいいのだが

汗で濡れた衣類を脱いでいたら
本人もまさかラッシャーになるとは思っていなかったらしい。



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さて、中山乗越展望台へのお散歩案はどうなったかというと
キム兄が既にこんな感じなので
「今日はもういいんじゃないか?」との事。

もちろんそれを僕は快く受け入れた。
僕も既に面倒くさかったのである。

実際、彼は半年振りの山歩きだったので
そこそこ疲れていたようだし、やはりこれくらいで丁度良かったのだろう。

そうとなれば
後はひたすらお酒を飲んで時間を潰すのみ。



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なんだかんだ言って、それが一番の目的なのだ。

貸し切りという安堵がやたらと解放感を生む。
こんな贅沢な山小屋ライフもそうそうない。



2人は焼酎を右手に地図を眺め
4~5月あたりに硫黄岳山行の予定を立てている。

2年前の夏に八ヶ岳の稜線を歩いていた我々。
その時に寄り道した硫黄岳山荘のトイレがあまりにも綺麗で
「ここは是が非でも泊まってみたい。」
なんて話をしていた事を思い出していた。

(なんだ、そんな大事な事を忘れていたのか。)

その事である。

それを再燃させていた2人。

「小屋開けのタイミングで行ってみたいね。」

こんな話を、実は数時間前の歩行時にしていたものだから
この日の我々に硫黄岳山頂への未練などあるわけがないのだ。

・・・・。

そんな熱い話が落ち着くと、2人は眠気に襲われる。
17時前に一旦布団の中へ。


18時に夕食の声が掛かると
食堂にいたのは4組の登山客のみ。
この日のメインディッシュは鶏鍋。



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美味い。
最後は白米をブッ込んで平らげる。
小屋で白米を3杯もおかわりするのは初めての事だった。


小屋に戻るとまたもやグータラ。
スペースを無駄に広く使う2人。



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大部屋の隅に目をやると
大量の毛布が分厚い層になっている。

それを見たら
どーしてもやったみたくなってしまうのが男というものだ。

今日は貸し切りだ。
こんな事、一生に一度出きるかどうかだ(大袈裟)。

崩れないように、慎重に。
その頂に寝転がる。



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キム兄がシャッター切ったその瞬間

僕の姿は
寝釈迦さまに見えたという。


(布団は綺麗に戻しました。あしからず。)


消灯の21時になると、室内の電気は消えた。

「小屋だと寝れない」病の僕も
さすがの貸し切り状態では話は別だ。

これまでにない程の早さで、僕はスッと眠りに落ちた。


・・・・。


2月26日(木)

5時30分頃には目が覚めてしまっていた僕は
6時20分頃に嫌々布団から出た。


小屋の至ってクラシックな朝食を美味しく平らげる。


大部屋に戻ると、当然のように布団の中へ。

天気は予報通り、あまり良くはなさそうだ。
なので、あまり急ぐ理由がない。

ダラダラとした時間をこれでもかと堪能する。



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荷物をまとめて小屋を出たのは8時20分。

外で足元の準備に取り掛かると
僕の右アイゼンが残念な状態になっている事に気付く。

前と後ろのセクションを繋ぐビスが無い。

そう、真っ二つだ。

・・・・。

これはいかん。

いったい、どこで?

応急キットに詰めてあったロックタイでなんとか応急処置をしてみる。
これで大丈夫か・・・。

そんなこんなで

9時に出発。



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上はガスだ。
どこへ寄っても何も見えそうもないので、このまま戻る予定。

北沢をそのまま戻ってもよかったのだが
シリセード欲に駆られていた僕の意向で南沢回りで戻る事に。


30分も登ると中山乗越。



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この先の展望台には絶景が待っている。
残念ながら、この日はそれも望めないのでスルー。


9時45分

行者小屋前。

その先に見えるはずの阿弥陀さま。
今年はダメか。

昨年拝んだそれを、想像で投影させては思いを馳せる。



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後は南沢を戻るのみ。
名残惜しさを滲ませる男がひとり。



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広い雪原にで出ると
彼は雪の感触を体全体で感じ取る。



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さて
僕の右アイゼンは結局
中山乗越あたりでまたロックタイが切れてしまった。
それ以降はノンアイゼンで下っている。

足元が硬く滑りそうなポイントでは



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簡易ソリで滑って回避。
なんとも合理的な手法のように思えた。

そんなシリセードの連続で
尻が痛くなったのは

言うまでもない。



林道歩き中盤で
登山道から外れ沢まで続く
斜度45°クラスのロングコースが現れる。

こ、これは・・・。



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これは滑りたい。

しかし
斜度がきつく、更には先日の雨の影響か雪面は相当硬い。

ソリを使うのは危険と判断し
通常通り、尻からの滑降を試みる。

ヤバい。
これは、速過ぎる。
両手で制御するも、全く速度が落ちなかった。



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過去最大級のシリセード。

ソリを使っていたら
僕は違う世界に旅立っていたかもしれない。


後で気づいたのだが

レインパンツの尻が

バッチリと破れていた。


・・・・。


12時10分

美濃戸山荘。



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空腹に耐えかねたキム兄のために、ここでお昼をとり
13時40分に美濃戸口に下山した。



こんな感じで
今年の赤岳鉱泉泊は終了。


今年も昨年も共通していた感覚なのだが
そこから望む横岳や阿弥陀岳の姿を拝んでも
決して「あそこに登りたいなぁ」とは思わなかった。

その姿は我々にとっては大仏さまのようなもので
それが観れるだけで本当に満足してしまう。

だから、今回も
「また硫黄岳に登れなかったなぁ・・・。」
とは思わない。

どちらかというと
「今年も硫黄岳まで行かなくて済んだぞ。」

この事である。


<どこに感動の頂点を持ってくるか>
それを考える事が”もったいない登山”の本質でもあるわけだが
やはり純粋にそれを遂行出来る事が、僕にとっては格別な瞬間なわけだ。

”欲や見栄”を捨てた2人だからこその心の山旅。

その追求は

まだまだ終わらない。



おわり
by inouewood | 2015-03-10 23:55 | 山のこと
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