黒百合ヒュッテと天狗岳のピュー


前日に調べた天気予報は微妙だった。


今回の山旅は
黒百合ヒュッテで小屋泊からの天狗岳。
初日は小屋までの予定だった。


初日の天気は安定しているようだが
2日目からどうも風が出るらしい。

それを調べたのは出発の6時間前。

今回、集合時間はギリギリに設定していた。
なんとか初日のうちに天狗行きをこなす事も可能な時間である。
(状況次第か。)
まあ、うまいこと対処する事にしよう。


しかし

こういう日に限って
同行者のフカさんが

遅刻した。





2月12日(木)


予定より1時間遅い出発。
登山口である渋の湯に到着したのは10時30分。


・・・・。


ここ数年で定着した冬の小屋泊シリーズ。
とにかく小屋でダラダラする事を一番に考えた山行である。

昨年もフカさんとふたり、赤岳鉱泉でその時間を堪能していた。
今年もどこかへ、という話になった時
やはり候補は八ヶ岳系のフィールドだった。
いくつか挙げた候補の中から、フカさんは黒百合ヒュッテを選んだ。

9年ほど前に
僕が山小屋デビューを果たしたのがこの黒百合ヒュッテ。
冬の天狗も5年程前に経験していた。
いくつもの思い出があるこの山域へ再び・・・。


・・・・。


天気は良さそうだった。
タラタラと準備して11時に出発。



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残念な事が発覚した。

僕の一眼レフの電池の充電が無い。

(やっちまった・・・。)

まさかの充電忘れ。
しかも予備電池も仕込んでいなかった。

電池の無い一眼レフなんて、ただの鉄の塊だわい。

さて、この塊はあと何回シャッターを切れるだろうか。


仕方ないので
この日はスマホをフル稼働させる。



13時40分。

黒百合ヒュッテ。



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さて
ここから空身で天狗岳へ向かうかどうするか。

小屋のシステム上
16時30分には小屋に戻っていなければならない。

やってやれない事もなかったが
あまりセカセカした登山を好まない我々は
やはり気分が乗らない。

晴れていた空はいつしか雲に覆われている。


そして僕たちは・・・



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きのこ汁とモツ煮を食べる事にした。

当初の予定通り
今日はこれにて終了。


お酒をチビチビやって・・・
本を読んで・・・
人の話を盗み聞きして・・・
ボーっとして・・・
ウトウトして・・・

小屋ライフをこれでもかと満喫。



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あまりにもまったりし過ぎて気持ち良いので

「明日も、どこも行かなくていいんじゃないか?」

と、いつものパターン発動。

フカさんは冗談だと思っていたかもしれないが

僕は本気だ。

まあどちらにしても
天候が我々にとっての条件を満たさなければ
もちろんどこへも寄らずに引き返すつもりではあった。


18時55分。

夜の天気予報はイイ感じだった。
皆、明日の天気を心配していたようで
ホッとした空気があたりを和やかにした。


この日の宿泊者は15人くらい。

さすが黒百合。
平日でもこの人数とは、人気の山小屋は一味違う。

人の多い雑魚寝が苦手な僕は
案の定、眠りにつくまでに2時間以上を要した。


・・・・。



2月13日(金)


やはり風は強かった。

が、時折日差しはある。
何とかなりそうだ。

モチベーションも落ちなかったので

「とりあえず天狗へ行こう。」

と、我々は8時に小屋を出発した。



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15分ほど歩くと
天狗を目指して先に出発していた女性が引き返して来た。

「この先、風が強すぎて踏ん張れなかった。怖いんで戻りますね。」

僕たちも行けそうな所まで行ってみると返し、先へ進んだ。


天狗兄弟が姿を現す。



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雪の天狗よ。
久しぶりだな。


この先、トレースが消えていた。

そして風は
容赦なく我々に襲い掛かる。

黙々とピッケルを付いて
気が付けば山頂まであと100mといったところ。

風は更に勢いを増した。

爆風だった。

フカさんは立てない時間が続いた。
突き刺したピッケルに必死でしがみ付いていた彼。
握り過ぎて、その指の爪が割れていたほどの襲撃だった。

僕はその風の襲撃をどこか楽しんでいた。

慣れというものは恐ろしいものである。
2年前、安達太良山でこのレベルの風は経験していたので
少し余裕があったのだ。


そんな中、僕はフカさんにどうするか訊ねた。

すると彼は

「今は登頂への執着心がまったく無い。下りたい。」

と答えた。


僕の待っていた答えだった。笑

嬉しい撤退である。

この状況で、そこへ行く意味をこれ以上見出せなかった。

ふたりはスパッと下っていった。

天狗岳は何回か来ているが
ここから、にゅう中山方面をマジマジと見た事が今まであったかな。
と、感じるくらい、目の前に広がるそれが美しく見えた。



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こんなにキレイだったのか。

正直、これを拝めただけでも充分満足できていた。



9時20分。

小屋に戻ると
行きで引き返していた女性が丁度下山を開始する頃だった。

「やっぱり、ダメでした!」

と、我々は彼女に報告した。


またもやここでまったりする。

僕はホットカルピスを注文。

なんだいこの美味さは。
体は蘇った。

・・・・。

この時間にあまり長居するのも申し訳ない空気になったので(笑)
10時に小屋を出発。

あとはササーっと下るのみ。
終盤にシリセードをかまし、しっかり楽しむところで楽しんだ。

11時。

渋の湯に下山。


いつも通り(笑)
山頂へ行かない山歩き。

今回は撤退ではあるが
やはりその状況でも心から楽しんでいた。満足だった。
またひとつ、心に余裕を蓄える事の出来た山行になったと思う。


この後は
「縄文の湯」からの、喫茶「いじわるばあさん」で昼食。
いつものルーティンでしっかり堪能。

最後まで満たされた二日間であった。


おわり



by inouewood | 2015-02-16 01:21 | 山のこと
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